脳波における3つBMI技術
こんにちは,バーチャルサイエンティストの卵のRueです.
さっそくですが,今日の動画では,前回紹介した脳活動計測法の脳波.
この脳波を使ったこれまでの脳科学の伝統的なBrain Machine Interface(BMI)技術を紹介しちゃいたいと思います.
聞いた事や興味はあるって人は多いかもしれないけど,具体的にどんな脳活動を観察して,どんなことが出来るようになるのか,についてはいまいちよく分かりにくいですよね.
そんなわけで,この記事では,脳波を使ったBMI技術といったらコレという感じの伝統的で王道な有名BMI技術について分かりやすく解説してみます.
事前に前回の記事(脳活動計測方法4選)の記事を見てるとより楽しめるかも!!
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脳波について+3つのBMI技術
さて早速ですが今日はこんな順番でお話していきたいと思います.
- 脳波の仕組み
- 脳波成分P300を使ったBMI技術
- 脳波成分SSVEPを使ったBMI技術
- 脳波成分ERDを使ったBMI技術
P300とかSSVEPといったものは,脳波の特徴的な成分ですね,後で詳しく解説します.
1脳波の仕組み
それじゃまずは,脳波の仕組みについて簡単におさらいしてみましょう.
脳波を計測する装置,脳波キャップはこんな感じの,水泳帽みたいな形状をしています.
脳波は,脳の深部の神経細胞の活動が電気信号として脳の表面,そして頭皮上に浮き上がってくるので,それを脳波キャップの内側についている電極から検知するというしくみなんですね.
そんな脳波ですが,データとしてはこんな感じ,1つの電極当たり,1つの波線って感じでデータが得られるんです.
この波線が色んな条件で色んな特徴的な形状を示すので,それを手掛かりに,脳活動からコンピュータを操作するって芸当が出来ているわけですね.
そしてそれらの特徴的な形状ていうのが,先ほど出てきたP300やSSVEPといったものなんです.
それじゃ,それぞれについて詳しく見ていきましょう.
2脳波成分P300を使ったBMI装置
まずはP300.
P300は一言でいうと気づきの電気信号.
被験者に何らかの刺激を与えて約300ms後に発生する大きな+つまりポジティブな電気信号のことです.
刺激提示から300ms後にポジティブ(Positive)な電気信号が見られるから,P300っていうんですね.
例えば,こんな課題が有名で,
・1/5の確率で●
・4/5の確率で▲
画面に表示される課題で,●の数を数えろって言われた場合,低頻度刺激,つまり画面に●が表示されたときに
って気づきますよね♪
その時,●が表示されてから約300ms後にPositive(+)の電気信号を示すんです.
このP300という脳波特徴を使った文字入力のBMI装置があって,これを一般にP300 spellerといいます.
P300 spellerは例えばこんな感じで6×6のマス目上に文字が配置されていて,一行,または,1列ずつ文字がぴかぴか点滅していきます.
この時,被験者は入力したい一文字に注目していると,この文字が光らなかったときは,高頻度刺激,1/6の確率で光った時は低頻度刺激と判断され,脳にP300が発生するんです.
あとは,発生したP300を脳波から検知して,その直前に光った行と列を特定することで被験者がコンピュータに入力したいと考えている文字を特定するってわけです.
実際の映像はこんな感じ!
こんな感じで被験者は特定の一文字に注意を向け続けることで,その文字が点滅した場合に,P300が発生し,このP300を検知することで入力したい文字を特定しているんですね.
ただ,見て分かる通り,この方法だと,1文字入力するのに,どうしても10秒程度はかかってしまうので,あまり快適ではありません.
そこで,文字入力をもう少し素早く行うために開発されてきたのがP300とは別の脳波成分,SSVEPという脳波成分を利用した,BMI装置があります.
3脳波成分SSVEPを使ったBMI装置
ってことで,2つ目の装置はSSVEPという,脳波成分を利用した装置です.
まず,人は目に何らかの光刺激を与えられると,視覚野のある後頭葉付近でVEP・視覚誘発電位という,光刺激に反応した脳波の特徴を示します.
この光刺激を一定の周波数,例えば,1秒に10回とか50回とか,そんな高速で点滅させると,VEPも光刺激と同じ周波数,一秒間に10回とか50回とか現れ,これをSSVEP・定常視覚誘発電位と呼んでいます.
このSSVEPが脳波に出現する頻度の違いを読み取って,マシンに入力したい文字を入力させるわけです.
例えばこんな感じ.
ABCの三文字があって,Bの文字を入力したいと思ったときに,Aは1秒間に10回,Bは1秒間に20回,Cは1秒間に30回点滅するとします.
この時,入力したい文字Bに注目していると,脳波成分SSVEPも1秒間に20回現れるので,これを脳波計でキャッチすることによって,Bの文字入力を実現するわけです.
実際の様子がこちら.
こんな感じで,画面に分割された特定のエリアを注目し続けることで文字入力を実施するんですね.
この動画の装置は丁寧に文字入力することを目標に作られていて,文字入力速度は控え目ですが,例えば中国のある大学はSSVEPを使った文字入力でスマホのフリック速度並みの入力速度を実現したってニュースもあったりしたので,やっぱりP300spellerよりも文字入力速度は早いかもしれませんね.
4脳波成分ERDを使ったBMI装置
さて3つめはERD,事象関連脱同期という脳波の特徴を使ったBMIを紹介します.
ERDは先ほどの脳波の特徴とはちょっと異なる性質を持ちます.
それは,
例えばP300やSSVEPを用いたBMI装置は,特定の文字をフラッシュさせるという視覚刺激が必要で,その刺激を利用した結果として文字入力を行えていました.
しかし,ERDを使った方法は,刺激を事前に準備する必要が無く,被験者がその場その場でコントロールできる脳波なんです.
例を出しましょう.
このだらんとした安静状態の時実は,右腕を操作する左側の脳の脳波はリズムよく波打っているんです.
次に,実際には右腕を動かしはしないけれど,
少し難しいですが,これが出来るようになると,左の脳の特定の周波数の脳波のリズムが狂ってしまうことがあるんです.
これを事象関連脱同期といって,BMI装置に利用しているんですね.
この脳波のリズムが狂ってしまうメカニズムを簡単に解説すると,人の脳の神経細胞は安静状態だと,ある程度協調してリズムを作っていることが知られているんですね.
こんな状態で,右腕を動かそうという強いイメージによって,脳の運動野をはじめとする脳部位が滅茶苦茶に活動しちゃったので,元からのリズムが崩れちゃったって訳なんです.
これを使って,例えば,右手を動かす運動イメージで右に行って,左手を動かす運動イメージで左に行く,みたいな感じのマウスカーソルのようなものを実現することが出来ます.
ただし,制御できるコマンド数は少なくて,ずっと前に確認した限りだと,右手,左手,足,舌の4種類の動作くらいしか識別出来ないみたいなので,汎用性はあまり高くなさそうかなって感じですねー
まとめ
って感じで3つのBMI装置を解説してみましたが,如何だったでしょうか.
BMI装置って意外と単純な仕組みで動いているって思いませんか.
皆さんのBMI装置に対する今の印象ってどんなものですか?
凄いとか,意外と普通とか,不気味とか,もしよかったら自由にコメントで教えてください.
次回の記事は,遂に実際にBMIがどのように使われているのかを紹介します.
ALSなどによって身体の自由を完全に失ってしまう,閉じ込め症候群.
手も口も動かないはずの患者さんとのコミュニケーションがBMI装置を用いることで可能になった,って論文を紹介します.
最新のBMI技術や脳科学を知りたい,興味があるって人は是非,チャンネル登録をして次回の記事をチェックしてね.
ではでは,今日はこのへんで.また次回の動画でお会いしましょう.
ばいばーい.
[参考]
EEG画像 physio-tech
http://www.physio-tech.co.jp/products/brainproducts/braincap.html
脳波の手習い
https://naraamt.or.jp/Academic/kensyuukai/2005/kirei/nouha_normal/nouha_normal.html
P300画像 古橋研究室
http://www.nuee.nagoya-u.ac.jp/labs/furuhasilab/brain.phphttp://www.nuee.nagoya-u.ac.jp/labs/f...
P300 speller画像
https://www.researchgate.net/figure/P300-Speller-matrix-with-a-highlighted-column_fig1_311264157